
この記事では、Wi-Fi/Bluetoothとは異なる通信規格「ZigBee(ジグビー)」の仕組みを、初心者向けにわかりやすく解説し、あわせておすすめの製品も紹介します。「電池がすぐ切れる」「反応が遅い」「メーカー同士が連携しない」といったスマートホームに関する悩みは通信方式の特性を理解し、適切に活用すれば解決できるので、この記事を参考にして、より安定稼動するスマートホーム化を目指していきましょう。
一言でいうと「電池で長く動く小さな IoT 機器を、たくさん・安定してつなぐための無線規格」です。センサーや照明、スイッチなど、常に動き続けるデバイスを超低電力で動かしながら、数十〜数千の端末をまとめて管理できるように設計されています。そのため、スマートホームだけでなく、産業用途のセンサーネットワークなどでも広く使われています。
上述の文章だけではイメージが掴みにくいので、私たちの身近な通信技術であるWi-Fiと比較し、身近な物に例えてまとめたのが以下の表です。
身近なものへの置き換え | 用途 | |
|---|---|---|
Wi-Fi | 高速道路 | 動画・ゲーム・PC など、大量のデータを高速でやり取りする |
ZigBee | 住宅街の細い生活道路 | 温度センサー・ドアセンサー・照明・スイッチなど、小さなデータをこまめに確実に届ける |
つまり、ZigBeeは「高速道路のような直線的な超スピードを出すのではなく、住宅街のような多くの生活を支える裏方の道路を這っていく」ようなイメージです。

ZigBeeは「IEEE 802.15.4」という国際規格をベースに設計されています。Wi-Fi(IEEE 802.11)とは全く別物で、通信速度より「省電力」「安定性」「多数接続」に重きを置いています。主に 2.4GHz 帯を使用しますが、地域や用途によって 868MHz / 900MHz 帯も使えます。
また、ZigBeeは「メッシュネットワーク」という賢い仕組みを持っています。これは、ルーターのデバイスが多数存在し、それぞれが近くの機器同士をバケツリレーのように通信させる仕組みです。どれか1台が故障しても、別のルートを通って通信が継続されるため、壊れにくく、止まりにくいネットワークを作れます。
ZigBeeは静かな裏方ネットワークと表現しましたが、まだ抽象的な感じが残っているので、4つの特徴に分けて紹介します。一言で表現すると「信頼性が高くて消費電力が少なく、万単位の同時接続を可能とする代わりに通信速度が遅い」仕組みです。

ZigBeeの機器は「コーディネータ(ハブ)」「ルーター」「エンドデバイス」の3種類があり、特に ルーター が自動的に通信を中継します。これにより、次のようなメリットがあります。
Wi-Fiのように「1台のルーターに負荷が集中する」問題が起きにくい点もポイントです。
ZigBeeのエンドデバイスは「必要な時だけ起動し、すぐにスリープ状態になる」という省エネ設計のため、ボタン電池1個で数年動く製品も珍しくありません。
スマートホームのセンサー類(温湿度・ドア開閉など)は、ほぼすべて ZigBee が採用されている理由がここにあります。
ZigBeeネットワークは論理的には最大65,000台以上のデバイスを接続できます。家庭用途ではそこまで必要ありませんが、工場・オフィス・集合住宅などの大規模ネットワークでは大きなメリットになります。
ZigBeeは最高でも 250 kbps と低速です。しかしこれは欠点ではなく、以下のための戦略的な設計です。
動画や音声のような大量データには向きませんが、スマートホーム機器には最適です。
ZigBeeセンサーやスイッチを組み合わせると、スマートホーム化においてより柔軟な動作が可能となります。例えば以下のような例がわかりやすいと重します。
これらはZigBeeの低遅延・高信頼性によってストレスなく動くため、実用性が非常に高いです。
ZigBee規格は Connectivity Standards Alliance(CSA) によって統一されています。そのため、ZigBee対応であれば異なるメーカーの製品でも同じZigBee ハブで動作します。特定の会社の製品だけを買い続ける必要がないため、ユーザーにとって非常に大きなメリットです。
近年発売されているスマートスピーカーやスマートリモコンにはZigBeeハブが搭載されているため、これらを中心に据えると以下のプラットフォームとの連携が可能となります。
こうすることで、音声操作や外出先からの遠隔操作も簡単になります。
ZigBeeセンサーはバッテリーが数年持つため、交換作業がほとんど不要です。「気づいたら電池切れで動かない…」というトラブルが少ないのも強みです。
ZigBeeは Wi-Fi や Bluetooth と同じ 2.4GHz を使っているため、大量のWi-Fi機器がある場所や電子レンジの近く、Bluetooth機器が多い環境では干渉しやすいため、設置する際に意識しないと正常に作動しない場合があります。
250 kbps のため、以下の用途には不向きです。
これらは Wi-Fi や Thread(Matter)などを使うべきです。
主な家庭用製品は照明や各種センサー、カメラ、ハブのような、低電力消費で十分に稼働するものが中心です。今回はこの中から一部を紹介します。


価格(2025年11月時点) | ¥8,980 |
|---|---|
カラー | ブラック |
サイズ | 100.5 × 30.75 mm(直径 × 高さ) |
重量 | 約 130 g |
入力電源 | Micro-USB 5V / 1A – 2A |
ポート | RJ-45(有線LAN)、USB-A、Micro-USB(給電) |
無線通信規格 | Wi-Fi 2.4GHz、Zigbee 3.0、BLE 5.0 |
動作環境 | 温度 5 – 50 ℃、湿度 0 – 95 % RH(結露なし) |
音声アシスタント | Amazon Alexa、Google Assistant、Apple Siri |
ZigBeeの代名詞とも言えるAqaraが出しているスマートリモコンとハブの兼用モデルです。これまで紹介してきたメッシュネットワークの中継拠点にもなるため、どんなに広い家でも初動のセンサーをトリガーとして、家中のスマートホームの制御を途切れることなく稼働させることが可能です。
インテリアとしても馴染みやすいシンプルなデザインである一方、セットアップ方法にややクセのある製品であり、スマートホームの玄人向け製品と言えます。

価格(2025年11月時点) | ¥28,380 |
|---|---|
サイズ | 約70.5 × 70.5 × 89 mm |
重量 | 377g |
解像度 | 4MP(2688×1520) |
視野角 | 対角133° |
ナイトビジョン | True Color Night Vision(f/1.0レンズ、スポットライト内蔵) |
電源方式 | USB-C(5V/2A) |
防水・防塵性能 | IP65 |
スマートホーム連携 | Apple HomeKit Secure Video、Amazon Alexa、Google Assistant、Matter、Zigbee、Thread、RTSP、NAS対応 |
ハブ機能 | ZigBeeおよびThreadハブ機能内蔵、Matterブリッジ機能あり |
防犯と見守りの両方に対応しているハイエンドなスマートカメラです。高価格に見合う機能性の高さであり、特にナイトビジョンは、暗闇でもはっきりと物体が確認できるほど高精細です。
見た目もマットな質感で高級感があり、野外設置も想定していますが、室内で大切に使いたいなと思えるカメラです。
スマートリモコンとスマートカメラに関する詳細を知りたい方は、以下の記事もチェックして見てください。
価格(2025年11月時点) | ¥11,980 |
|---|---|
本体サイズ | 145.7mm × 46mm × 96mm |
本体重量 | 461g |
対応レール | Uレール、Iレール |
バッテリー | 6000mAh |
通信方式 | ZigBee3.0 |
パワー | 最大12kgまで制御可能 |
音声コントロール(SwitchBotハブが必要) | HomeKit、Alexa、Google Assistant、IFTTT、Matter |
ハブを中継させることで多数の照明やセンサーを動かすことが可能なAqaraシリーズのカーテンコントローラーです。1回の充電で最大1年間バッテリーが持続し、内蔵された光センサーにより、日差しに応じてカーテンを制御することが可能です。
取り付けも簡単でスマートスピーカーとも連携できるため、わかりやすくスマートホーム化させられるアイテムの一つです。
今回はZigBeeに関する紹介をしました。「裏方の通信規格」として地味に見えるかもしれませんが、スマートホームやIoTが実用レベルで使える理由の多くは ZigBee のおかげといっても過言ではありません。もしも、これからスマートホーム環境を整えるなら、ZigBee対応デバイスは非常に有力な選択肢になるはずです。
また、近年では通信の新しい標準規格である「Matter(マター)」の存在も見逃せません。こちらに関する詳細を知りたい方は、下記の記事もチェックして見てください。